選手の我儘は悪なのか?

みなさんこんにちは.
前回の続きを書きたいと思います.

パフォーマンススポーツの場でみられる,
特にエリートアスリートにみられる
悩ましい問題についてです.

選手が自分にはこれが大事だと思って
「こうしたい」「ああしたい」と自己主張することがあります.
それに対してコーチは
「我儘ばかりで大事なことから逃げているんじゃない!?」
と考えることがあります.

この場面は
コーチの立場でも選手の立場でも
悩ましい問題になりがちです.

選手が
「自分の思い通りにトレーニングすること」
もしくは
「自分の思い通りのトレーニングが
 実施できるように主張すること」

これは我儘(ワガママ)でしょうか?
それとも適切な自己主張でしょうか?

日本では
上記の状況になると
多くは「我儘」として受け入れられません.

この「我儘」は悪でしょうか?

コーチは
もし,選手が好きなようにやって結果が出なければ
「好き勝手にやってるから勝てないんだ」
「好きなトレーニングばかりだから耐えることができないんだ」
と決めつけて
「メンタルが弱い」
「今まで以上に努力をせよ」
と言って、終わらせたりします.

本当にそうでしょうか.

ここに深い洞察力がなければ
コーチとしては力不足ということになるでしょう.

ここで少し話を変えますが,
昔、パフォーマンスを上手に表現していて
面白いなと思った言葉がありました.

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中田英寿氏はローマ時代に
バティストゥータを
「下手だけど点は取る」と評していた。

https://news.livedoor.com/article/detail/3750451/
【加部究コラム】森本貴幸が放つ異彩からより引用
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この
「下手だけど点は取る」
は実にパフォーマンスを上手に表現しています.
そして,日本的でおもしろい表現です.

バティストゥータのwikiを見れば
理解していただけると思いますが,
彼は世界を代表する超一流のストライカーです.

その選手が「下手」と表現されています.

おもしろいですね!

日本は,
いつも技術力にフォーカスしがちです.
(そこにもフォーカスできないと
 だいたい「気持ちが弱い」といいます)

ドリブルやパスが上手いことが
=(イコール)パフォーマンスでしょうか.

フォワードがどんなに
ドリブルやパスが上手だったとしても
点を取れなければ(繋がらなければ)
パフォーマンスが高いとは言えません.

「日本サッカーの課題は決定力不足!!」
という言葉を何百回聞いたかわからないですよね.
それでも,一部の技術力にこだわったりします.

さて,話を戻して
もし,バティストゥータが
数試合で得点できずにパフォーマンスが発揮できなかったとします.
彼は,ドリブルもパスも下手くそです笑

そして,彼はいいます
「練習量を減らして,試合の映像を見ることを増やしたい」
と言ったとします.
さてどうしましょう?

日本的なコーチングで考えると
「そんな我儘言ってどうする!」
「もっと練習量を増やさないとだめだ!」
(1に努力!2に努力だ!)

「ドリブルもパスも改善できるところはたくさんあるだろ!」
(1にも2にも技術だ!)

「そういえばトレーナーがお前の股関節が硬いと言ってたから
それを改善するメニューを追加しろ!」
(専門家の意見が大事だろ!)
とか言っちゃいそうです.

彼は自信を持っていいます
「練習内容は大きくは変えたくない.
 それよりも,今は練習量を減らし,
 試合映像を見る時間を増やしたい」

これは我儘でしょうか.
彼は点を取るための技術と判断力が
自分のパフォーマンスを支えていることをよく知っています.
そして,自分がどうすればチームに貢献できるかを理解しています.
彼のパフォーマンスがわかると,彼の言葉の行間が読めるようになります.

「練習内容は大きくは変えたくない.
(なぜなら,点を取ることに特化した練習をしているから)
 それよりも,今は練習量を減らし,
(どうも判断力にエラーが生じているから)
 試合映像を見る時間を増やしたい
(そうすることで判断のもとになっている
 情報について見直すことができる)」

となるかもしれません.
選手は全てを言葉にすることはできません.
だからこそ,コーチは深い洞察力が必要になると思います.

とはいうものの選手は
「我儘」な時もたくさんあります.
でも,選手が言葉にしないと,
わからないことが多いと思います.

大切なことは,
ゴールに向かう際の
問題を認識し
原因を探ることができているか.
そこに自信を持っているのか.
そこが解決することで自信につながるのか
ということになります.

前回の最後にも述べましたが,
選手の我儘も「根っこの自信」から
出たものであれば,認めるべきです.
なぜなら,自信というものは
これまでのパフォーマンス発揮の経験から
生まれたものだからです.
つまり,彼らのパフォーマンスを支えるものと
言い換えられると思います.

軸がなくグラグラしてる時は
誰かの言葉を鵜呑みにしてるケースもありますので
「問題の認識」と「原因を探る」は
選手とコーチが一緒になって丁寧にできるといいですね.

ということで長くなりましたが,
皆さんの考えるきっかけになればと思います.
(あくまでも個人の意見です)

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