トレーニング編 第7回
前回は,
自分の身体の要求に合致したトレーニングを実施することが
大事ってことを話したので,もう一歩踏み込んでみよう…
柔道は,筋力やパワーが必要であることは,だれも異論をはさまないだろう.
しかし,体力が筋力とパワーだけで構成されている,とはいえない以上,
これら以外の体力要素も十分に養っておく必要がある.
たとえば,
持久性,柔軟性,平衡性,
コーディネーション(協調性,協応性),敏捷性,などである.
持久性は,
容易に疲れない能力もしくは疲れても休めばすばやく回復する能力のことをいい,心肺,血管系の機能によるところが大きい.たとえ,筋力が強くても持久性にすぐれているとは限らない.この持久性は,エアロビックエクササイズやサーキットトレーニングなどを通じて養うことができる.
柔軟性は,
関節の可動性のことをいい,関節自体の構成状態によって度合いが決まる.
この他にも,関節を動かすときに関わる筋肉や腱,靭帯,脂肪などに関係している.
関節の構成状態は後天的に変えることができないとしても,
その他の要素は,ストレッチングを実施することによって大きく向上する.
平衡性は,
バランス感覚のことをいい,静止姿勢のみならず運動中の姿勢もバランスよく保てる能力をいう.これは,耳にある耳石器と半器官,そして筋肉や腱にある知覚末端器などの働きによる.視覚も大きな役割を果たす.
コーディネーションは,
神経と筋肉の調和がよく,思い通りに働く状態をいう.
柔道の場合,すべての状況で相手との対応動作を必要とするため,数多くの対応動作を身につけておかなくてはならない.
敏捷性は,
素早く方向転換のできる能力をいい,単に足を使って,体重を移動させる動きだけに限らず,手や首などの部分の方向転換をも含んでいる.神経の切り替えの素早さと関係が深く,この他にも筋力や柔軟性の向上が敏捷性の向上の要因になる.この能力は,敏捷性向上のトレーニングもさることながら,専門とする武道の稽古を通じて向上させることができる.これと同じことは平衡性とコーディネーションについてもいえる.
以上のような体力要素全般を鍛える必要がある.
ただし,
自分の身体の要求が何なのかを見抜くには,
競技特異性を十分に理解し,自分自身をよく分析しなければならない,
ということに注意してほしい.
日本のコーチングでは,
この部分が不十分で,ある要素のみに偏っていることが多いと感じている.
また,限られた時間で効果的に体力を向上させるためには,
発育発達段階などを考慮し,
適した時期に適したトレーニングを実施しなければならない.
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