柔道の体力トレーニング

トレーニング編 第11回

「勝手に連載シリーズ第1弾ーートレーニング編」もあと2回.

柔道の体力トレーニングについて,先人たちはどのように述べているのか,
を簡単にまとめたい.

先人が試行錯誤を繰り返し,積み上げてきたもの(知識)を学び,
その知識の上に少しずつでも積み上げていくこと
もしくは,
稽古照今,温故知新というコトバが適切だろうか
そうすることで,さらなる高み・完成へと近づくことができる.

そこで,
松本芳三先生の「柔道のコーチング(初版が昭和50年)」をみてみたい.

「柔道の体力トレーニング」の最初の部分を引用する.

「柔道の体力トレーニングは,
 柔道で目標とする強・健・用の身体的育成を目指すものである.
 人間育成の長期的な展望に立つ体力トレーニングの処方と
 比較的短期的な競技能力向上のための処方とは矛盾しない.」

国際競技力向上のために,体力トレーニングが必要か必要でないか
という低い次元の議論ではなく,
人間育成と競技能力向上といった異なる視点でみても,
体力トレーニングの処方は矛盾しないということを述べている.
もし,そこに矛盾がある場合は,それぞれについて考えていく必要があるが,
(広い視野で)多角的にみても,そこに矛盾がないのであれば,
体力トレーニングを否定・反対することは困難である.

「柔道の本質をふまえ,本領とする技術を通しての道を求め,
 トレーニングの原則に沿う方法をとれば,
 自然に両者の成果があがるはずである.
 したがってここでいう体力トレーニングは,
 柔道の目的に合致すると共に,人間的能力の開発と増大に関連し,
 柔道の競技力を強化するものであろう.」

上記の内容は,簡単ではない.
柔道の本質をふまえる

本領とする技術を通して道を求める

トレーニングの原則に沿う方法をとる

自然に両者の成果があがる

多くの指導者・コーチは,最初でつまずきそうである.
ここでいえることは,
「技術の向上と体力の向上にトレードオフがみられる」というコーチがいれば,
それはコーチの能力の問題と言わざるを得ない.

「1.体力の強化は,競技能力を引き上げ,社会活動の能率を高め,
  人間としての形成と人生の幸福に寄与するものである.
 2.体力トレーニングの内容を便宜的に技術的体力トレーニング,
  一般的基礎体力トレーニング,専門的体力トレーニングに分ける.
 3.柔道の体力トレーニング法は,伝統的に優れた練習法に
  新しい近代トレーニングの方法を加えた内容になる.
 4.現実に体力トレーニングは,科学の裏付けと,現場の創意と実証によって
  改善されている.柔道における体力づくりの研究も同様であり,今後を期待する.」

1−3に関しては,本を読んでほしい.
大切なのは,4の「今後を期待する」というところだ.
もし,この部分が昭和50年(初版の際)に書かれていたとすると,
ここからどれだけ改善し,進歩したといえるのだろうか.
指導者・コーチは,自身の経験だけに頼り,
40年間同じことを繰り返してきただけではないのだろうか…

自分が死ぬ時に,
「あの先生が言ってたことがやっとわかった.」では,
改善や進歩はないのである.

何度も繰り返すが,

われわれは,
嘉納師範のように
よく学び,実践する
ということをやめてはいけない.

自戒の念をこめて.

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