筋力レーニング採用を反対する方々へ

競技力向上を目的とし,
筋力トレーニングを採用しようとすると,
いまだに反対する方がいる…
50年以上前であれば,反対する方がたくさんいてもおかしくない…
が,いまだに…である.
20年以上前にも
窪田登先生がこのような議論をしているので
私の意見も交えながらまとめてみたい.
「他の条件が同等であったら,
 当然筋力やパワーにすぐれている選手の方に分がある」
といった表現法を,窪田先生は大歓迎し,
スポーツ選手のための筋力トレーニングの重要性を説いて回ったが,
この意見に同調してくれる人ばかりではなかったそうである.
反対する方の意見は,今もあまり変わらない.
「ウエイトトレーニングは,筋肉を太く発達させるが,
 同時に筋肉は短くなるので,柔軟性が失われる」
というものである.
今は,「ウエイトトレーニングをすると筋肉が硬くなる」
という表現が多いかもしれない…
が,内容は同じである.
この点については,
1950年頃を境にして研究が大いに進み,
「正しくウエイトトレーニングを進めていく限り,
 このようなことは起こらないこと」が判明している.(20年以上前に…)
また,「筋肉が短縮する」という表現もおかしい.
関節をまたいでついている筋肉は,筋肉が切れたりしない限り,
そう簡単に短くなることはないし,
筋力を高めるトレーニングをするときに,
ストレッチングを併用すれば,柔軟性の向上を図ることができる.
反対する方の意見はもう1つある.
「筋力トレーニングをするとスピードがにぶくなる」
というものである.
これは,選手が感覚的にそう感じている場合もある.
私も選手から「にぶくなったような気がする.どうしたらよいだろうか」と
質問されたことがある.
この点についても1950年前後からなされ出した研究の結果,
まず注意深くトレーニングを進めていきさえすれば,
むしろスピードの向上につながりことはあっても,
マイナス効果が出るものではないことが判明している.
100m走の選手が,積極的に筋力トレーニングを採用している事実を
ご覧になれば,このあたりの疑問が解消するのではないだろうか.
個人的には,ウエイトトレーニングを採用していた
マイクタイソンの動きをみていただければ,必ず解消されると信じている.
筋力向上による体重増加とパフォーマンスの関係について質問されることがある.
たしかに筋力の向上以上に,体重が増加してしまえば動きが制限されることもある.
しかしながら,実践の中でこのような問題を抱えていた人は,
トレーニング採用を反対する(否定する)以前に
その他の問題をたくさん抱えていることが多い(食事や減量方法など).
それをないがしろにして,トレーニング採用を反対するのである.
大事なことは,筋力トレーニングを正しく行うことである.
正しく行われている限り,マイナス効果を生むはずはなく,
むしろプラスの効果が多いというべきである.
ただ,正しく行うためには
それ相当の知識が必要であることは言うまでもない.
言うまでもないので,言いたくもないが,
専門的な知識が必要であるということは,
筋力トレーニングだけではなく,
すべてのこと(コーチングなど)にいえることである.
われわれは,
(嘉納師範のように)
よく学び,実践する
ということをやめてはいけない.

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