原理原則に従う!?

トレーニング編 第4回

前回,

「私は原理原則に従う.ここから外れさえしなければ,失敗はない」


と記した.

では,原理原則というのは何なのか??

ここが非常に重要ではあるが,コトバにして書き記すことに限界がある.

それは,暗黙知に高さと深さがあるからだと感じている.

今回は,形式知のみで,議論にはならないが,

噛み砕いてトレーニングの原理・原則について記したい.

トレーニングの原理・原則として

「オーバーロード」

「特異性」「可逆性」「適時性」「全面性」「個別性」「漸進性」「反復性」「意識性」

といったコトバを聞いたことがあると思う.

オーバーロード(過負荷)とは,「ふだん常用しているよりも強い運動負荷」のことをいう.
 
つまり,

「トレーニングの効果を得るためには、すでに持つ能力に刺激となる負荷が必要である」

ということである.
西ドイツの運動生理学者ヘッティンガーは,アイソメトリックス*で次の3点を見出した.

1.最大筋力の20%以下の力でトレーニングしたときには,筋力が低下していく.

2.最大筋力の20-30%の力でトレーニングをしたときには,筋力に何らの変化もない.

3.最大筋力の40-50%以上の力でトレーニングをしたときには,筋力が向上していく.
1.では筋萎縮が起こり(廃用性萎縮),3.では筋肥大,筋力増大が起こる.

これらは一般人が対象になった場合であり,

アスリートになった場合では,かなり変わってくる.

アスリートの場合には

「専門とするスポーツ活動で使っているよりも強い筋力を発揮できるトレーニングをすれば,

 それがオーバーロードになって,筋力の向上が期待できる」のである.

よく聞く話であるが,

「まったく筋力トレーニングをしないで,世界チャンピオンになった選手がいる」

から,やらなくてもいいでしょ??という人がいるが,

それがやらない理由であれば,あまりにも意識が低い.

たとえば,

「私は,筋力向上を狙っているとき,1階級もしくは2階級上の選手と稽古をしている.

 ただ,この稽古がかなりハードなため,筋力トレーニングはやっていない.」

という理由であれば,「筋力トレーニングをやれ」とは決して言わない.

それは,選手が原理原則(オーバーロード)を理解しているからだ.

彼は,自分自身で課題解決方法を考えて取り組んでいる.
私が彼にいうのは,

「上の階級の選手と自由練習をする方法」のメリット・デメリットと

「筋力トレーニング+同階級の選手と自由練習をする方法」のメリット・デメリットだろう.


「まったく筋力トレーニングをしないで,世界チャンピオンになった選手」から学んでほしいのは,

「筋力トレーニングをしなかった」ということではなく,

「どのように工夫して稽古に取り組んだのか」ではないだろうか.

……つづく


*絶対不動のものを動かそうと力んでいるときのように,全く動きが伴わない筋活動のトレーニング. 等尺性筋活動(アイソメトリック・コントラクション)ともいい,文字通り筋肉の長さが変わらない
 筋活動である.この筋活動によるトレーニングをアイソメトリックスと呼ぶ.

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